蜂と英雄

モドル | ススム|モクジ

  第9話  

「正気なのか?」
「ここから先は一歩も通さない。退いてジーク!」

 古代ローマの遺跡を背に、ジークとベスパは見つめ合う。

(催眠術……か?)

 とジークは思ったが、彼女の瞳には確かな意志の光が感じられる。
 戦闘態勢に入るGS達に目配せし、ジークは説得を試みる。

「よく聞くんだベスパ。ルシエンテスの狙いは、太古の魔神テュポンを解き放つことだったんだ。テュポンは台風が神格化した破壊の魔神。その威力は、アシュタロスの究極の魔体をも遙かに凌ぐ」
「……」
「ここで阻止しなければ、どれだけの生命が失われるか……お前にも解るはずだ」

 ベスパは黙って話を聞いているが、表情は何も変わらない。
 ならば彼女が立ち塞がる理由として考えられるのは。

(正規軍の兵士に何かを言われたか……)

 周囲に転がる兵士達の遺体に目をやり、ジークは言った。

「恐らく……正規軍兵士がお前を狙ったと思う。だがお前に対する仲間達の態度は、私だって納得してはいないんだ。この事は上司にも掛け合って――」
「そうじゃない……」

 ベスパは言葉を遮るように首を振る。

「知ってるでしょ。あたしは一度世界を敵に回した女なんだ。今更惜しい命じゃない……そういう事じゃないのよ」

 憂いに満ちた、彼女に似合わぬか細い声色だった。

「どうあっても、引く気は無いのか」

「お願い帰って。でなければ、私はあんた達を殺すよ……!」

 再び吹き抜ける風の中で交差する視線。
 それはいつもの二人が交わすものと、全てが違っていた。

 ジークとベスパが対峙しているその後ろで、身をすくめうずくまっていたアンジェラが、ゆっくりと起きあがっていた。
 ナックラヴィーはアンジェラを守るように、傍らでじっとしている。

「もう……邪魔しに来ないで……」

 アンジェラは服のポケットに手を入れ、粗末な紐が括り付けられた小さな何かを握りしめる。それを胸元に当て、目を閉じて何かを呟き始めた。
 すると少女の体に、新たな魔力が集まり始める。

「唐巣先生、あの少女!」
「あの子供も、例の魔導師の手下なのか? 一体何をしようというんだ」

 いち早くそれに気が付いた唐巣神父とピートは、彼女の呟きを聞き逃さなかった。

 ハリストス実に復活し、死をもって死を滅し……墓にある者に生命を給えり――

 少女が紡いだ言葉は、唐巣神父にとって大きな衝撃をもたらす。

「復活のトロパリ――!?」

 アンジェラは言葉を唱えながら、骨を十字架に見立て、人骨で作られた逆向きの十字架を天に掲げた。彼女に集まる魔力は膨れ上がり、やがてフォロ・ロマーノの丘全体へ向けて解き放たれる。

「骨の逆十字で復活の賛歌を唱えるとは……これ以上ない神への冒涜だ!」
「先生、これはどういう事なんですか?」

 険しい表情でアンジェラを睨みながら、唐巣は語る。
 アンジェラの唱えた言葉は本来、正教会でハリストス(キリスト)復活を祝福する賛歌の一節である。
 神の意志に反する行いを意味する逆十字と強い魔力。このふたつが重なり合ったとき、復活の賛歌は本来の持つ意味を全て逆に作用させる邪な呪文となる。
 響き渡る言霊は特殊な波動へと変わり、それはローマに漂う無数の悪霊を引き寄せ始めたのだ。
 現世に強い未練を残して留まり続ける悪霊。
 正常な思考など持ち合わせるはずもなく、己を形成するただひとつの情念に縛られて生者に害をなす者ども。
 受け入れられぬ『死』という現実を憎悪に置き換え、その矛先は目に映る全ての――とりわけ生者に向けられる。

 ハリストス実に復活し、死をもって死を滅し……墓にある者に生命を給えり――

 悪霊達の目の前には格好の依り代である新鮮な死体がいくつも転がっている。
 浅ましい妄執を代行する肉体を見つけた悪霊や邪精霊どもは、我先にと死体に憑依していく。
 朽ちたはずの瞳に映るのは、まばゆい生命の光を放つ人間達の姿。
 甦った亡者の群れは誰に言われるまでもなく、それを目指して動き始めていた。

「ちょっと……先回りしてた味方が全滅してるどころか、死体を逆利用されて囲まれるなんて。あり得ない汚点だわね、まったく!」

 周囲を取り囲むゾンビを眺め、溜息混じりに呟きながら令子は神通棍を構える。

「グダグダ言ってるヒマはないワケ。こいつらのボディは魔族なのよ。強力な魔力と体力を持ってるだけ余計にタチが悪いわ。おたくらも気合い入れな!」

 エミの檄にその場のGS全員が頷く。それほどに敵の数は多く、肌を刺すような邪気が渦を巻いていた。

「ベスパの事はジークとワルキューレに任せるとして。この状況ではネクロマンサーの笛が一番の武器になるわ。横島クン、シロ、タマモ、それから冥子、アンタ達はおキヌちゃんに敵が近付かないようガードして。他の連中はゾンビを各個撃破。但し調子に乗って敵の中で孤立しないように気をつけること。頼んだわよ!」

 令子の指示を合図に、GSメンバーのそれぞれが迫り来るゾンビ達へと立ち向かっていく。
 おキヌがネクロマンサーの笛を吹き鳴らし、死体に憑依している悪霊の動きを鈍らせたところへ、ピートや雪之丞が切り込んでいく。
 数々の戦いをくぐり抜けてきた彼らの足並みは実に見事な物だったが、次々と蘇る死体の群れは、その包囲を容易には崩さなかった。
 GS達がゾンビと激突してこちらを気にしなくなったのを見ると、アンジェラは懐から丸い宝玉を取り出し、それを抱きかかえながら地面に手を付いて念を込め始めた。
 すると地の底から強大なエネルギーが湧き上がり、アンジェラの持つ宝玉へと引き寄せられ、金色の輝きを帯び始めていく。

「龍脈のエネルギーが吸われている。ジーク、もう話し合っている時間はないぞ!」
「わかっています……!」

 数匹のゾンビを蹴り倒したワルキューレが、ジークの隣に駆け寄って言う。
 目の前に立ち塞がるベスパ、そしてその背後にはナックラヴィーと謎の少女。
 姉の言う通り、もはや時間は一秒も残されていない。
 ジークもまた、覚悟を決める。

「ベスパ……お前の意志は良く分かった。ならば我々も魔族の習いに従い――」

 ジークは静かに構えを取り、大地を踏みしめる。
 ワルキューレは鋭い爪に殺気をみなぎらせ。

「押し通るまで!」

 ジークとワルキューレは、左右から挟み込むように挑みかかる。
 ワルキューレの初撃を飛び退いてかわしたベスパの喉元へ、ジークの手刀が放たれるが、ベスパは紙一重でこれを回避。直後、ベスパは反射的に殴り返して来るが、ジークはそれを待っていた。伸びきった腕を掴んで手元に強く引き、彼女がバランスを崩したところで足を払う。回転するように倒れ込んだベスパめがけ、追撃の鉄拳が放たれた。

 ドスッ!

 砂煙が舞い上がると同時に、何かが砕ける音が響き渡る。
 煙が晴れたそこでは、ベスパが紙一重で顔を逸らし直撃を免れていた。
 地面を砕いた拳を引き、もう一撃を振り下ろそうとするジーク。
 ベスパはそのスキを見逃さずみぞおちを蹴り上げ、そのまま後方に投げ飛ばした。
 受け身を取って素早く起きあがったジークだが、腹部を押さえて一瞬動きが止まってしまう。そのスキをカバーするように、ベスパの側面からワルキューレの跳び蹴りが炸裂する。

「はぁぁぁッ!」

 勢いに押されて後退するベスパに、ワルキューレの高速連撃が叩き込まれる。続けざま繰り出される拳や蹴りに圧倒されたのか、ベスパはガードを固めたまま動かない。
 止まらぬ連撃の中で、ベスパはワルキューレの燃え盛るような激しい怒りを感じていた。
 むしろその怒りを隠すための連撃だったのかも知れない。
 ベスパは聞いてしまった。繰り出される攻撃の合間に吐き出された言葉を。

「弟は……ジークはお前のためにとずいぶん心を砕いた。馴染まぬ場で暮らす気持ちは、自分が一番良く解ると言ってな。お前がどう行動しようが、それは好きにすればいいさ。だが! 弟を裏切り傷つけると言うなら、私が生かしてはおかない!」

 痛い。
 殴られることよりも、味方から向けられた憎悪よりも。
 仲間を裏切ったと思われることが何より痛かった。
 大人の外見をしていようと、ベスパとて生まれて一年余りの存在に過ぎない。知識として知る事は多くても、自らが感じ得た経験はあまりに少なすぎる。
 何と答えれば良いのか、他に選ぶ道はなかったのか。
 納得のいく答えは、彼女には見つけられない。
 それでも。
 わずかな経験の中で、ただひとつだけ確信している事があった。




 夜空の下で煌々と燃えさかる巨大な炎。
 ゆっくりと沈んでいくそれを見つめていた時、心も体もバラバラになってしまいそうだった。
 自分もそこに飛んで行きたかった。でも、行けなかった。
 あの方はそれを喜びはしない。

(これから自分はどうすればいい? 何のために私は――?)

 答えを探すきっかけを与えてくれたのは、一見頼りなさそうな情報士官の青年だった。
 彼と何度か行動を共にするうちに、やがて自然に思えるようになってきたのだ。




 この生活も悪くない――と。



(私は……もう二度と……)

 決意を改めて確かめたとき、心に力が戻ってくる。
 この先どうなるかはわからないが、今は彼らを通すわけにはいかない。
 それが最悪の結末に繋がると言うなら。

(落とし前は私が付ける!)

 ベスパはありったけの霊力を解放し、衝撃波として放つ。
 ワルキューレはその直撃を受けて空中に放り出されたが、一回転して空中で制止した。
 派手に吹き飛んだが、ダメージはさして大した事はない。

「通すわけには……いかないんだよ!」

 吹き出す霊力が大気を震わせ、髪を浮き上がらせる。
 手元で収束した霊気が破壊のエネルギーへと変換され、激しく放電していた。
 そしてさらに、ジークとワルキューレを圧倒するほどの霊力が膨れ上がっていく。

「さすがのパワーだな……しかし!」

 ワルキューレは大きく羽を広げ、放たれた弾丸の如くベスパに突撃する。
 ほぼ同時にベスパが放った霊波砲を横に回転しながら回避すると、その勢いを利用して回転を持続、爪を突き出しそのまま体当たりを敢行した。

 ドッ――!

 ワルキューレの爪が腹部を貫いた――かに見えたが、突き出された腕を左脇に捕らえ、ベスパは体当たりを受け止めていた。
 素早く腕を回してワルキューレの首を極めると、持ち前の怪力で背後へと放り投げた。

「うおおおおおッ!!!!」

 パンテオンの柱を三本へし折り、四本目の石柱に激突してワルキューレはようやく止まったが、さすがに効いたらしく、すぐに立ち上がることは出来なかった。
 ワルキューレが向かってこないのを見ると、ベスパはジークの方へと顔を向けた。
 言葉を交わす事もなく、二人は同じタイミングで地を蹴る。
 人間ならば目で追うのが精一杯な、超スピードで繰り広げられる乱打の応酬。
 ベスパの拳が、ジークの掌が飛び交い、五体の全てを凶器に変えた嵐のようなぶつかり合いだった。
 大振りなパンチをいなし、無防備になったベスパの脇腹に掌打が滑り込む。それを見越していたように、鋭い膝蹴りがジークの顔面を襲う。
 すかさず顔を逸らしたジークはバク転し、再び腰を落として構えを取る。

「強いな。パワーもスピードもスタミナも、お前の方が遙かに高い。が、それでも勝敗が見えないのが戦いというものだ」

 いたって平静なフリをするジークだが、すでに呼吸は乱れ、汗が額に滲んでいる。
 ふと目をやれば、先の戦いで切断され、鉄板で仮留めしている左腿から体液が滲み、滴り落ちていた。

「その脚じゃあ、どう転んでも勝てないよジーク」
「……かもしれん。だが、弱い者にはそれなりの戦い方という物があるのさ。それを今からレクチャーしてやる」

 ジークは素早く霊波を撃ち、それと同時に自身も走り出す。
 それを難なくかわしたベスパの真下、地に貼り付くほどの低い位置からジークが滑り込み、両手を地に付いて跳ね上がると、そのまま槍のような蹴りを繰り出した。
 一発目を囮にした時間差攻撃――しかし生粋の戦士たるベスパには、全てが見えている。蹴りを外し隙だらけのジークに、決着を付ける一撃を撃ち込む。

「!?」

 が、霊波で貫かれたジークの姿は歪み、映りの悪くなった映像のように輪郭が乱れ、突然消えた。

(幻術!?)

 そう気付いたのもつかの間、誰かに背後から腕を極められ、痛みに気を散らした瞬間、地面に押し倒されてしまう。
 うつ伏せのまま顔を上げれば、膝をベスパの腰に置いて重心を支配したジークが見下ろしていた。

「げ、幻術なんて使えたんだ」
「いざというときのために学んでおいた。もっとも、私にはあの程度が限界だが、良い目眩ましにはなるさ」
「やられたね……」
「お前は真正面から敵と戦おうとしすぎだ。同じミスを繰り返していては生き残れないぞ」
「う、うるさいね」
「悪いがしばらく眠ってもらう。後のことは気にするな。私がなんとかしておく」

 押さえ付けられながらもベスパは感じていた。ジークの力が未だ本調子でない事を。
 ジークが大怪我を負ったことには、自分にも責任がある。
 ジークは情報士官のくせに、いつも傷だらけだった。
 魔界の湖で自分達を逃がそうとした時も、この脚の傷も、

(全部私たちを助けようとして……そればっかりじゃないかジーク!)

 それなのに、自分だけが傷つかずにいられるわけがない。
 いま体で自由になる場所と言えば――

「待ってジーク。ひとつだけ聞いて欲しいんだ」
「いいだろう」

 その時ベスパの左手が微かに動き、何かを握りしめるのを、ジークは見逃していた。

「やっぱり……今のあんたじゃ無理よ!」
「うっ!?」

 ベスパは握りしめていた小石をジークの左脚に投げた。それはうまい具合に怪我の部分に当たり、痛みでジークの気が一瞬逸れた。
 そのスキを見逃さず強引にジークを跳ね飛ばし、今度はベスパが馬乗りになってジークの自由を完全に支配した。

「形勢逆転だね。言ったろ、勝てないって」
「……ああ、そうらしい」

 ジークは冷静だった。いつもと変わらぬように、じっとベスパを見つめたままだった。

「もうひとつ教えておく事を思い出した。我々軍人にとっての勝利とは、任務を遂行する事にある。この戦い、我々の勝ちだ」
「なんだって?」

 ハッとして顔を上げたベスパは、さっき放り投げたワルキューレの姿がどこにもない事に気付いた。
 青ざめながら振り向いた先には地面に倒れ伏したアンジェラと、上空で彼女が持っていた宝玉を手にしているワルキューレの姿があった。

「さっきエネルギーをこの宝玉に集めているのを見た。これがなければ、目的も果たせまい!」

 地面ではナックラヴィーが怒り狂い腕を振り回していたが、遙か上空にいるワルキューレには届かない。
 だが、ベスパを始めその場にいた全員の心胆を寒くしたのは異形の怪物ではなかった。

 倒れ伏していた少女はゆっくりとその身を起こす。
 顔に掛かった金色の髪の奥には、赤い光が宿っていた。
 闇の濁流が、再び彼女の体から溢れ出してくる。

「返して……!」

 空を見上げたアンジェラの瞳は普段のエメラルドではなく、まるで血のように深い赤のルビーであった。

「返して!」

 彼女の魔力は、青空を切り裂く黒い光の筋となって溢れ出す。
 それは剣に似た形を成し、ワルキューレめがけて振り下ろされる。
 漆黒の剣が迫ってきた時、筆舌しがたい悪寒を感じたワルキューレは、それを咄嗟に旋回してかわした。
 空を切るだけだった黒い光が瓦礫に触れた時、それは一瞬にして塵芥へと帰してしまう。
 銃弾の雨を消滅させ、正規軍兵士を瞬時に死に至らしめた、純粋な魔の力そのものだった。

「バカな……人間がなぜ!? 魔の根源そのものを操るなど、上級魔族でもそうはいないはずだぞ!」

 さすがのワルキューレもこれには驚きを禁じ得ず、冷たい汗が頬を伝う。アンジェラはゆっくりと宙に浮き、再び黒い光の剣で宙をなぎ払った。

「ま、まずい、かわしきれん!」
「返して……返して……返してーーーーーーーッ!」

 全てを絞り出すかのように、アンジェラは叫んだ。
 まぜ彼女の感情が高ぶるのか、その理由を知るものはこの場にいない。
 彼女を包む闇はさらに広がり、黒い光の剣が次々と空間に突き出して数を増やす。いくら上空に逃げていようと、これだけの数を避けきるのは恐らく不可能だろう。
 光はそれに触れた周囲の遺跡、地面、ソンビなどの全てをも塵芥に変えてしまう。
 それはベスパとジークの元やゾンビと戦うGS達の元へも伸び始めていた。

「やめてアンジェラ、お願い!」

 ベスパはジークを物陰に突き飛ばし、力を解放するアンジェラに向かって走り出した。
 そして躊躇うことなく黒い光の中へ飛び込むと、後ろからアンジェラを強く抱きしめた。

「もうやめて……あんたはこれ以上やっちゃいけない!」

 黒い光の中は、身体がバラバラになりそうな魔力の渦だった。それでもベスパは力を緩めず、必死にアンジェラの名を呼び続ける。

「う……う……ううっ」

 ベスパの温もりと声に、アンジェラの瞳の色が落ち着いてくる。
 血のような赤が透き通る緑に変わると同時に、彼女は意識を失った。

「ガァァァァァァッ!」

 直後、獣の咆吼が響き渡る。
 ナックラヴィーが空間を歪めてゲートを開くと、ベスパ共々アンジェラをどこかへ送り飛ばしてしまった。
 そしておぞましき魔獣もまた、その空間に身を躍らせて姿を消してしまった。

「ベスパ……」

 取り残されたジークはベスパが消えた場所をじっと見つめていた。
 彼女がなぜあんな行動を取ったのか。
 突き飛ばされた時に見た寂しげな瞳が、全てを悟らせたのだ。

(そうか、そういうことだったのか。ならば、私も応えなければ)

 成すべき事はひとつ。
 たとえこの身が朽ち果てようとも、必ず。
 死の臭いが充満する遺跡の上で、ジークは虚空を見上げていた。
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